• 電子契約対象文書の電子化可否について

    2017.08.14

    CONTRACTHUB

    電子契約対象文書の電子化可否について

    新日鉄住金ソリューションズ株式会社
    ワシントン州米国公認会計士
    宅地建物取引士
    齋木 康二

    監修 宮内・水町IT法律事務所
    弁護士 宮内 宏

    今回は、電子契約の導入を検討しているお客様からよくお問合せがある対象文書の電子化可否の判断方法についてご紹介したいと思います。

    電子化可否判定フローチャート

    電子化可否の判断はそれほど難しくなく、3つのチェックをすることで判断が可能です。

    契約関連文書(例えば金銭消費貸借契約書、不動産賃貸重要事項説明書、リース契約書など)が、法令上電子化可能か否か判断する方法をフローチャートにまとめましたのでこれに沿って説明していきます。

    ※本フローチャートは、電子化可否の判断方法に関する一般的な考え方の一例を示したものです。具体的な事例に係る電子化可否の判断については、必要に応じて、監督官庁や法律専門家等にご相談ください。

    電子化可否判定フローチャート

    1)スタート:対象文書の特定

    電子契約で交付、保存したい文書を特定します。

    2)分岐A:法令に「書面」で保存又は交付するなどの規定が有る。

    その文書に関係する法令に「書面で保存する」「書面で交付する」といった書面(※2)という文言を含む法令の有無を調査します。法律だけでなく、施行規則、省令、ガイドライン、留意事項などにも注意が必要です。なお、この段階で問題になるのは、多くの場合「業法」とよばれる法令です。民法や法人税法、電帳法など電子契約にとってメジャーなものは、すでに実績が多くでており、結論がでているからです。

    (※2)「書面」以外にも「文書」「書類」が紙媒体を前提とする場合があるので、注意が必要です。文言の定義を定めた条文に、「文書」や「書類」が何をさすか明記してある場合も多くあります。

    3)ゴールA:契約自由の原則により電子化可能

    ある文書について、「書面」に関する法令が全く存在しない場合、電子化可能です。日本の民法は契約自由の原則により、原則として契約の内容・方式は自由だからです。よく「口頭でも契約は成立する」と言われますが、それと同じ理由です。

    4)分岐B:e文書法など、包括的に電子化を認める法律の対象文章か

    その文書がe文書法や条例(※3)などで包括的に電子化可能な文書に指定されているか否か調査します。例えばe文書法については公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIIMA)発行の「e-文書法電子化早わかり 付録e文書法対象リスト」を参照します。

    (※3)東京都、横浜市など多くの自治体で「行政手続等における情報通信技術の利用に関する条例」が施行されています。

    5)ゴールB:該当法令の要件を充足により電子化可能

    e文書法や条例など該当する法令の要件を充足することにより電子化可能です。

    6)分岐C:電磁的の措置、電子情報処理組織を利用する方法などの電子化要件がある。

    分岐BがYesの場合、その文書に関して「電磁的記録」や「電子情報処理組織を利用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法」を認める法令が存在するか否かを確認します。分岐Aで確認した書面規定の第2項、第3項などにこのような規定が存在することが多々あります。

    7)ゴールC:該当法令の要件を充足により電子化可能

    分岐CがYesの場合、電子契約は、電磁的記録や電子情報組織、その他の情報通信の技術を利用する方法にあたるので、この要件を満たせば電子化可能になります。ただし、その要件の詳細は施行規則、省令、ガイドライン、留意事項など様々な文書に記載されていることがあり、取りこぼしのないように注意が必要です。最終的には、監督官庁に確認するのがおすすめです。

    8)ゴールD:法令上、電子化は不可能

    ある文書について書面(交付、保存)規定が存在するにもかかわらず、電磁的措置、電子情報処理組織を利用する方法などを認める要件の記載がない場合、その文書は書面=紙で交付、保存する必要があり、電子契約をすることは原則としてできません。ただし、その場合でも念のため監督官庁に確認することをおすすめしています。

    「書面」という言葉が法令上のキーワードだね。

    以下にこのフローチャートを利用した判断例を以下に示します。

    例1 宅建業法における重要事項説明書⇒電子化不可

    重要事項説明書は、宅建業法第35条(重要事項説明)に「・・・これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。」と記載があるので、分岐AはYes。重要事項説明書はe文書法などの対象になっていないので、分岐BはNo。宅建業法などに重要事項説明書の電磁的措置、情報処理組織を利用した方法などの記載がないので分岐CはNo。よって結論は「ゴールD」となり、電子化できません。

    例2 宅建業法における賃貸契約書⇒電子化不可

    賃貸契約書は、宅建業法第37条(書面の交付)に「・・次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。・・」と記載があるので、分岐AはYes。賃貸契約書は、e文書法などの対象になっていないので、分岐BはNo。宅建業法には、賃貸契約書の電磁的措置、情報処理組織を利用した方法などの記載がないので分岐CはNo。よって結論は「ゴールD」となり、電子化できません。

    例3 マンション管理組合との管理業務委託契約書⇒電子化不可

    マンション管理組合との管理業務委託契約書は、マンション管理法第73条(契約成立時の書面の交付)に、「次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。・・・」と記載があるので、分岐AはYes。マンション管理組合との管理業務委託契約書は、e文書法などの対象になっていないので、分岐BはNo。マンション管理法には、管理業務委託契約書の電磁的措置、情報処理組織を利用した方法などの記載がないので分岐CはNo。よって結論は「ゴールD」となり、電子化できません。

    例4 民法の保証契約書⇒電子化可能

    保証契約書は、民法第446条(保証契約)第2項に「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」とあるので、分岐AはYes。保証契約書は、e文書法などの対象になっていないので、分岐BはNo。民法第446条第3項に「保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」とあるので、分岐CはYes。よって結論は「ゴールC」となり、電子化可能です。

    例5 建設請負契約書⇒電子化可能

    建設請負契約書は、建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)に「次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。 ・・」とあるので、分岐AはYes。建設請負契約書はe文書法などの対象になっていないので、分岐BはNo。

    建設業法第19条第3項に、「・・前2項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定める・・」とあるので、分岐CはYes。よって結論は「ゴールC」となり電子化可能です。ただし、この場合、上記「相手方の承諾」と「国土交通省令で定める規定」が要件となります。

    例6 下請法第3条の書面⇒電子化可能

    下請法上第3条の書面(注文書など)は、同条に、「・・・下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面下請事業者に交付しなければならない。・・・」とあるので、分岐AはYes。下請法の第3条の書面はe文書法などの対象になっていないので、分岐BはNo。下請法第3条第2項に「書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。」とあるので、分岐CはYes。よって結論は「ゴールC」で電子化可能です。ただし、この場合、上記「公正取引委員会規則に定める要件に従うことが前提です。

    電子契約がもっと普及して、原則としてすべての文書の電子化が認められるようになることを期待したいわね。


    電子契約導入のための20のヒント : 目次

    1. 法令

    1.1 電子帳簿保存法 : 電子契約で税務調査に対応できるのか?
    1.2 電子帳簿保存法 : 電子契約と書面契約の混在に問題はないのか?
    1.3 電子帳簿保存法 : スキャナ保存と電子契約
    1.4 電子署名法 : 注文書や注文請書を本当に電子化して大丈夫か?
    1.5 電子署名法 : 電子署名の証拠力
    1.6 印紙税法 : 電子契約の場合、本当に印紙税を払わなくてよいのか?
    1.7 下請法 : 下請法対応に関する注意点
    1.8 建設業法 : 建設請負契約の電子化について

    2. 技術

    2.1 電子署名 : 電子署名・署名検証の作業イメージは?
    2.2 電子署名 : 電子署名のしくみとはたらき
    2.3 電子署名 : 電子証明書を選択する5つのチェックポイント
    2.4 電子署名 : 長期署名について~10年を超える契約への対応~
    2.5 タイムスタンプ : タイムスタンプの効果としくみ
    2.6 EDI : 電子契約とEDIは何が違うのか?

    3. 運用

    3.1 導入目的 (ROI・購買プロセスの見える化) : 電子契約導入のためのROI算出方法
    3.2 導入目的 (ROI・購買プロセスの見える化) : 電子契約による購買プロセスの見える化
    3.3 機能 (契約書管理・カスタマイズ) : 電子契約の導入で契約書管理を劇的に改善
    3.4 機能 (契約書管理・カスタマイズ) : 電子契約導入時に効果的なカスタマイズのご紹介
    3.5 手順 (スモールスタート・取引先説明) : スモールスタートのすすめ
    3.6 手順 (スモールスタート・取引先説明) : 取引先に参加してもらうにはどう説明すればいい?)

    ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言として依拠すべきものではありません。また法令改正等により変更される場合があります。具体的な事案については、当該事案の個別の状況に沿って、別途法律専門家等にご相談ください。

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